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「ノンセクト ラジカル~1970そして」  [観劇の感想]

3月26日(日)

劇団アルファー本公演 Vol.24  「ノンセクト ラジカル~1970そして」(作・演出 時風 静恵) 
を観てきました。

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STORY
 2016年12月25日。今日で閉店となる喫茶エスポワールにやってきた砂野世理子。かつての学生運動仲間で、今はエスポワールのオーナーの田所清と激しかったあの時代を懐かしみ、確かにかけがのない青春だったと昔の思い出を語り合う。そこへ世理子の娘が母の身体を心配して現れる。「母は病院を抜け出して来たのです。」余命わずかな世理子にはどうしてもこの場所で娘に伝えなければならないことがあった。
 1970年。喫茶店エスポワールの地下をアジトに、リーダー田所を中心に学生たちが集まっていた。彼らはどこの党派にも属さないいわゆるノンセクトだった。暴力を否定し、正論を持って平和と民主主義を主張してゆく。信念を持って活動していた彼らだったが、仲間を殺され時代の渦に翻弄され思もよらないかった方向へと流されてゆく。
 ベトナム戦争や安保闘争などを背景に、平和・反戦の意識から学生運動に参加していった若者たちのの青春群像。
                               公演プログラムより


この日は団員5名で行きました。

会場は下北沢の東演ホール。駅から徒歩で約20分のところです。ネット上に詳しい案内が載っていたおかげで迷わずにすみました。どなたかわかりませんが感謝です。

東演ホールは客席が60席の小さなホールでした。客席と舞台がとても近く、後ろから2列目の席でもすごい臨場感です。舞台は幅こそ狭いものの奥行きと高さが十分あって、それが最大限生かされていました。喫茶店エスポワールとその地下室が、背の高いパネルの移動だけで転換します。ブリッジの音楽も工夫されていて、美しい転換でした。暗転前の切り方にもセンスを感じましたし、転換後にガラリと空気が変わっていることにも驚かされました。こういう転換のこだわりって好きです。見習いたいです。地下室の長い階段も、舞台の高さを生かしていて効果的だと思いました。

内容も興味深いものでした。私は今年60歳になります。1970年はまだ13歳でした。静岡で暮らしていたので、安保も学生運動も遠くの出来事でした。ただ、前年に起こった東大紛争には叔父が関係していたことで、社会的な大きな事件というよりも、きわめて家庭的な事件としてとらえていました。機動隊の安田講堂への放水やヘルメットを被った学生が投石する姿を、母と2人で祈るように見守っていたことを覚えています。母親にとっては可愛い弟の身がさぞ気がかりだったことでしょう。

成長して少し歴史的背景が見えるようになっても、私が叔父の轍を踏むことはありませんでした。母親は神経質なほどそのことを恐れていました。しかし、何より高校もそして大学も祭の後のように静かで、すっかり熱が冷めてしまっていました。

この芝居を観て、改めて叔父のことを思いました。音楽と文学を好み、私が虫を捕まえると、可哀想だから逃がしてやれと言った叔父がなぜあんなに熱く荒々しく運動にのめり込んだのか。思えば一度もそのことについて話を聞いたことがありません。聞いてはいけないことと無意識のうちに思っていました。これはとても個人的な話のようですが、実は世代を超えて多くの人が疑問に思うことではないでしょうか。「なぜ学生たちはあんなにも熱く荒々しく運動にのめり込んだのか?」

若い役者さんたちの火の出るような議論や乱闘にも心を動かされました。特に狭い舞台でのアクションは苦労なさったと思います。迫真の演技は観客席にびんびん気持ちを伝えていました。また、ベテランの皆さんのリアルで心のこもった言葉も私の心を揺さぶりました。

帰りがけインド料理をいただきながら、芝居の感想で盛り上がりました。先に述べたような、転換の工夫や若い役者さんたちの迫力ある演技、ベテランの皆さんの味について語り合いました。そんな中、ある人が「今、この芝居をやることに意義がある」と言いました。確かに平和への純粋で熱い思いを、忘れかけていた世代に思い出させてくれる芝居であり、知らない世代に伝える芝居でもあります。

劇場の外で作者の時風さんに「劇列車さんでもどうですか?」と言われ「あんな若いエネルギーはとても出ません」と返事をししまったものの、こういう骨のある芝居を、ぜひ一度、座・劇列車でもやってみたいなあ。そこの若い人、座・劇列車で芝居してみませんか?

劇団アルファー様、素敵なお芝居ありがとうございました。

劇団アルファーの次回公演は
 「葬送狂奏曲」(原案/中道進、脚色・演出/時風静恵)
 8月2日(水)~6日(日) 会場 TACCS1179(新宿区落合)
だそうです。楽しみですね。




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