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『天国までの百マイル』について(2) [天国までの百マイル]

物語のモチーフの1つとしてピーター・ポール&マリー(PPM)の『500マイルも離れて(500miles)』が使われています。作中で何度か流れ、そして歌います。全米1位を獲得したPPMの代表作の一つです。私も昔から好きな曲でした。
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曲中に「あなた」とあるのは恋人でしょうか。一緒に故郷を出て新しい生活をするつもりだったけれど恋人はなぜかやって来ない。家族に見つかってしまったのか、あるいは心変わりしたのか。男は1人で行く決心をします。しかし、故郷を離れれば離れるほど故郷は恋しい。やがて、男は歳をとり落ちぶれて、バッグにシャツ1枚なく、ポケットに1円の金もない。故郷からは500マイルも離れてしまった。もう2度と帰れない。
もとはヘディ・ウエストという女性フォークシンガーの曲だそうです。ただ、実際にヘディ・ウエストの曲を聴いてみると、アップテンポのカントリーで詞も曲もかなりPPMのものと違っています。この曲のルーツと言われるフォークソング『900miles』に近いものでした。
『900miles』は全米を旅するホーボー達の歌だったそうです。作者も不詳です。「ホーボー」というのは、今ではクラウン(道化師)の形式の一つになっていますが、「クラウン」や「トランプ」と同様、元は浮浪者の呼び名です。中でも「ホーボー」は全米を無賃乗車で旅する人達のことで、だから汽車の煤で黒く汚れたメイクをします。口の周りだけ白くするのは、何かを食べたあと袖で口を拭うとそこだけ煤がとれるからだとか。
ホーボーは映画『北国の帝王』でも有名ですね。
この映画の主人公はエースという名のホーボーです。彼は列車の無賃乗車の達人でした。仲間から「北国の帝王」と呼ばれ、敵であるはずの鉄動員からも一目置かれる存在でした。一方、19号列車の車掌ジャックは無賃乗車を決して許さず、見つけると情容赦なく列車から叩き落として殺していました。映画のクライマックスはもちろんエースとジャックの対決です。


話がずいぶん逸れました。
不況のために職を失い、故郷を遠く離れて放浪するしかないホーボーの悲しみが、PPMの曲では当時のヒッピー達の思いと重なり、そして『天国までの百マイル』では、バブルの崩壊ですべてを失った男の悲哀に共鳴します。
最近では忌野清志郎さんが訳したカバーがドラマの主題歌に使われて有名になりましたね。現代の日本人の心にも響く歌なのでしょう。

タイトルは「500miles」ですが、最初のリフレインは「a hundred miles 」。表題にもある「100マイル」は、安男の母が入院している病院がある三鷹から房総の鴨川(作中は鴨浦)までの距離だそうです。ほぼ160㎞なんですね。

安男はその100マイルを母親を乗せて走ります。車は中古のワゴン車。途中で発作を起こせば、母親のきぬ江は死んでしまうかもしれない。何でそんな無茶を……と思った方はぜひ公演においでください。


PPMのベストアルバムです。「500マイルも離れて」の他に「パフ」「天使のハンマー」など名曲を網羅しています。


ヴェリー・ベスト・オブ

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2012/06/13
  • メディア: CD



へディ・ウエストのアルバムです。「500Miles」も収録されていますが、PPMとは全く違う曲ですのでご注意を。



Hedy West Volume 2

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: VANGUARD MASTERS
  • 発売日: 2012/07/30
  • メディア: CD



映画『北国の帝王』ロバート・アルドリッチ監督の最高傑作。テレビ放映版で編集された部分をオリジナル声優で追加収録したそうです。

<キャスト&スタッフ>
Aナンバーワン…リー・マーヴィン(小林清志)
シャック…アーネスト・ボーグナイン(富田耕生)
シガレット…キース・キャラダイン(朝戸鉄也)
クラッカー…チャールズ・タイナー(上田敏也)


北国の帝王 [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: Blu-ray



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