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劇列車は6月も走ってますよ!~稽古報告:高平九 [稽古内容]

毎日暑い日が続きますね。
四街道市民劇団「座・劇列車」座付作家高平九です。

「オカリナの少年~クロスロード2」(作:高平九)稽古

座・劇列車は12月4日の定期公演に向けてこの暑さのなか稽古に励んでいます。
先日、公民館の窓を開けて換気をしながら稽古をしていたところ大量の虫が乱入して来ました。稽古の最中はみんな集中していたのですが休憩時間になると大騒ぎ。ナチのV2ロケットが飛来しても演奏を続けた「グレンミラー楽団」みたいで格好いいなあと思いました(笑)
次の稽古のときには公民館のほうで殺虫スプレーを用意してくれていました。助かります。

稽古は半立ち稽古の段階です。キャストは台本を手に持っているので、観ている人には台本ではなく舞台を観るようにお願いしています。稽古場にいる全員が集中して物語の場を作りあげることが大切だと思うからです。みんなとても集中しているので次第に人物が見えるようになってきました。

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小道具について

拳銃を使った格闘シーンがあります。小道具というのは、使う人はもちろんその場にいる役者全員が本物であると思わないと成立しません。そのために銀行強盗のエチュードを何度かやりました。モデルガンの部分の名称、撃ち方なども説明して、強盗役と銀行員、お客を交代で演じてみました。自分がもし銀行強盗だったら、自分がもし銀行員だったら、そして自分がもし銀行強盗に襲われた銀行にいたら何を感じどう動くのか。疑似体験によって舞台に「本当」を乗せられたら思います。ただ、アメリカで18歳の少年が銃を乱射した痛ましい事件があったばかりだったので気持ちはちょっと複雑です。やはり銃は規制しなくてはなりませんね。

今後の予定

7月からは台本を外して稽古をしてもいいことにします。そのためにプロンプターを付けます。プロンプターは役者にセリフを教えるのが役割ですが、教えるタイミングがなかなか難しいです。役者がわざと間をとっているときもありますし、思い出すのに少しだけ時間がかかっていることもあります。少なくともあまりせっかちな人はプロンプターには向きませんね。耳で聞くだけでなくしっかりと見ていないとタイミングはつかめません。難しい役割ですので、私が演出をするときは決まった人にやってもらっています。
セリフは単に暗記しても役に立ちません。相手役との呼吸や物語の流れにうまく馴染ませて自然に発せられる必要があります。誰でもが普段やっていることですが、それを舞台で再現するのはとても難しいのです。

8月からはキャスト全員が台本を外して稽古をする予定です。セリフが入って台本から自由になると稽古が楽しくなります。最初のうちはぎこちないセリフのやり取りや動作も、物語の中に溶けて馴染んでいくのがわかります。それらを細かく修正しながら、全体がよどみなく流れるようにしていきます。物語がまるで生き物のように躍動するところまで持って行けるかどうかが肝です。

9月から通し稽古ができるといいなと思います。金曜日は基礎練習や準備片付けなどで1時間半くらいしか時間がとれませんから、どうしても部分稽古になります。その分、月に2回の土日4時間稽古で必ず1回は通し稽古をします。しかしそうすると、9月から11月まで6回しか通し稽古ができません。10月、11月は臨時稽古を2回ほど入れてもらおうかな。そうすれば10回通すことになります。

アマチュア劇団の悩みは全員がなかなか集まれないことです。芝居ができあがってくると代役では噛み合わなくなってきます。でも、健康、家庭、仕事を優先して集まっている集団ですから仕方がありません。アマチュアの宿命です。

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公民館まつり公演 10月9日(日)(予定)

開催されるかまだはっきりしないようですが、私たちが稽古をしている四街道公民館のお祭りが10月7日から9日にかけて予定されています。公民館利用団体による年1回の発表会です。座・劇列車は毎年最終日の2時からホールで芝居を上演しています。

今年はすでに作品も決まり上演許可も取りました。キャストも決まって6月から稽古をはじめたところです。演出は高平九。
男性キャストが1人足りなかったため客演をお願いしました。
キャスト5人、上演時間30分強の小品ですが、楽しくて深みのある作品です。毎回稽古のたびに発見があって楽しいです。
演目名や客演の役者の名前は8月末に開催が決定次第発表いたします。それまでしばしお待ちください。


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どうか皆さん、公演までお元気でお過ごしください。 以上、高平九でした。

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12月19日、令和3年の最後の稽古でした。 [稽古内容]

12月19日、令和3年の最後の稽古でした。

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公演の反省の後、来年度の作品について1人1作をあげてプレゼンをしました。

この日は残った7作について質問や意見を交換しました。2作については台本の一部を読み、1作については過去のビデオを一部鑑賞しました。

結果、2作については著作権の問題などで上演は難しいだろうということになり5作が残りました。

年末年始、この5作を団員それぞれが読み直し、1月の稽古ではみんなで読んでみて、さらに候補作をしぼっていくことになります。

劇団の座付作家高平九の新作も候補作に残っていますが、実はまだ完成していません。1月にみんなで読んで他の作品と比べることになります。採用されるかどうかは作品の出来次第です。

また、この日は映像作家中村照雄さんに作っていただいたBlu-rayを配付する日でしたので、公演の出演者の皆さんも顔を出してくれました。まだ、2週間しか経っていないのにとても懐かしい。賑やかに公演をしたのが夢のようです。

来年の稽古始めは1月7日(金)19時~21時 四街道公民館和室(2階)です。

来年度公演の台本選定をやっていますので、見学なさりたい方は遊びにいらしてください。芝居に興味がある方はどなたでも歓迎します。もちろん団員は喉から手が出るほど欲しいのですが、けして強引な勧誘はいたしません(笑)

いつもやっている基礎訓練(ダンス、ストレッチ、発声など)、それから候補作の台本読みが主な内容ですのでお気軽にどうぞ。

なお、見学希望の方は前日までにzagekiresha@gmail.comまでご連絡いただくと助かります。

1月の稽古予定(すべて四街道公民館です)

 7日(金)19時~21時 和室
 8日()17時~21時 和室
14日(金)19時~21時 和室
16日()13時~17時 調理室
21日(金)19時~21時 和室
28日(金)19時~21時 和室

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LINEで会議をしました。 [稽古内容]

LINEで会議をしました。

公民館が休館したこともあり非常事態宣言の期間は稽古も休むことになりました

入団してから15年になりますが、毎週金曜日に稽古があるのが当たり前でしたので何か妙な感じです。半数以上の劇団員は私よりも先輩ですから、何倍も寂しい思いをしていることでしょう。

そこで週に一回LINEを使ってみんなで会議(音声のみ)をすることにしました。今日は2回目ですが、7名の団員が参加して久しぶりに元気な声を聞くことができました。

主な議題は5月『俺らってやっぱ天使じゃねえ?』の稽古と公演についてでした。この件に関しては嬉しいことに全員が前向きでした。非常事態宣言が解除されたらすぐに稽古に入り、何としても5月公演をするということに決まりました。

話し合いは30分間という約束でした。準備した議題が意外にも早々に決着し、時間が余ったので12月の本公演『やまんば おゆき』についても話し合いました。

まずは昨年の出演者に出演の意向を確認することになりました。もちろん、今すぐには決められないという方もいると思います。家族の反対もあるかもしれません。そういうことも含めて回答してもらうことになりました。皆さんの回答を受けて演出部でキャストについて検討し、欠員を補う形で出演者を募集しようと考えています。原則、昨年のキャストを変更しないということも確認しました。

昨年から今年にかけて状況は一変してしまいました。

30周年記念公演は、『やまんば おゆき』を再演することが前から決まっていました。でも、単なる再演ではありません。「姥捨て」は老齢化が深刻となった現代にも通用するテーマだと信じて上演を決めました。

30年前の『やまんば おゆき』に出演した元劇団員にも声をかけました。四街道ミュージカルや千葉市民ミュージカルの出演者にも加わっていただきました。なるべく多くの市民の皆さんに出てもらってお祭りにしたいと思っていました。

嬉しいことに、青年劇場の福山啓子先生、船津基先生に演出をお願いすることができました。30年続いた劇団だからこそ、高名なプロの先生方に指導をしていただいて、自分たちの芝居作りを一から見直そうという意気込みで臨みました。

30年前の『やまんば おゆき』は朗読劇でした。劇団「あすなろ」を主宰していた西田了先生が脚本・演出を担当してくださり、四街道市民が多数参加した公演だったと聞いています。今回は朗読劇ではなくふつうのお芝居として上演することになり、まず高平九が西田先生の脚本を参考に新たに脚本を書きました。その脚本を福山先生、船津先生の御助言にしたがって書き直したのが現在の脚本です。

キャストも決まり、福山・船津両先生の丁寧なご指導で稽古も順調に進んでいました。

稽古が始まってすぐに、演出の先生方から作中に出てくる様々な事象について調べて理解を深めるように課題が出ました。出演者で分担して「江戸時代の農村の生活」とか「とちの実団子」などについて調べて発表し合うことは勉強にもなりましたし、また楽しい経験でもありました。

ところが、ようやく一回だけ半立ち稽古をしたところで、コロナ感染が広がったことによって稽古を中断せざるをえなくなりました。

結局、昨年末に予定していた公演を今年末に延期しました。その後状況はさらに悪化して今日に至っています。

緊急事態宣言によって多くの方が苦しい思いをしていらっしゃいます。その犠牲を無駄にせず、コロナ感染者数を減らしたいですね。さらにワクチン接種によってウィルスを黙らせれば、またマスクなしで笑ったり話したり歌ったりできる日常が戻ってきます。毎週芝居の稽古もできるでしょう。

そして、お祭りのような30周年記念公演にしたいものです。

その日を思い描いて今日を無事に乗り切りましょう。

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12月18日(金)今年最後の稽古です [稽古内容]

12月18日(金)今年最後の稽古でした。

本来なら12月5日に『やまんば おゆき』の公演を終えて、まだその余韻に浸りながらお疲れ様でしたというところですが、今年はなかなか思うようになりませんでした。来年こそは5月公演、10月の公民館祭り公演、そして本公演とすべての上演ができるように祈りたいと思います。

さて、この日の稽古もダンスでスタート。公民館の窓がリニューアルされて障子がなくなりました。小さな格子のガラス戸なので、自分の姿を映しながら踊るのに最適。まるでスタジオのようです。鏡と違ってちょっとぼやけているのもいい。欠点をうまく隠してくれています(笑)

一人を除いてはみんな50代から70代。しかし、みんな元気です。何度も踊ってもみんな息切れ一つしていません。

次はワークショップ。これも今回で一区切り。

 第10回ワークショップ セリフのためのレッスン(後半)

レッスン3 声のベクトルレッスン

 このレッスンも鴻上尚史氏の「表現力のレッスン」からお借りしました。
 人に台詞を伝える。人の台詞を受け取る。これは当たり前のことのようですが、この当たり前のことが舞台に上がるとなかなかできないものです。

 日常を再現する。これは演技の理想かもしれません。しかしながら、日常自然にできていることが、舞台上では簡単ではありません。台詞や相手役との関係性も含めてすべての状況が作り物だからです。それらのすべてを本当のもののように見せるのが役者の演技の力です。

 大抵の人が相手に台詞を伝えることには熱心ですが、受け取り方が雑です。相手に共感を示す時には相手の声の高さやトーンに合わせて、特に語尾に寄り添うように台詞を始めなければなりません。逆に相手の台詞に反論する時や話題を変える時には、全く異なる高さやトーンではじめることも必要でしょう。相手役をよく見る。相手役の台詞を聴く。これは演技の基本です。
 
レッスン4 滑舌(活舌・アーティキュレーション)

 西田先生いわく「まず第一に声の魅力を増すこと。響きのある声を出し、正確に発音し話すことで感情や意志をきちんと伝えることができる。母音では『え』を曖昧にしない」

 滑舌は役者にとっては大きな課題の一つです。正確に発音してはじめて相手役にも観客の皆さんにも言葉の意味と気持ちが伝わるのです。
 
 今回は朝日新聞に掲載されている「天声人語」をテキストにしました。毎日、様々なジャンルが話題になっているので、日頃使わない言葉にも出遭うことができます。
 一人ずつゆっくりと段落ごと読みました。一つは文化的な内容、もう一つは政治的な内容でしたが、さすがにベテランの役者さんたちだけあって、どちらもとても聞きやすい声で読むことができました。

滑舌に問題のある人はたくさんいます。日常は滑舌が問題にされることはあまりありませんが、舞台ではそれなりの音量も必要としますし、滑舌があまりに悪いと役者として致命的な場合もあります。
また、役柄によって様々な職業の用語を使う場合もあります。何年か前に病院が舞台の作品を上演したとき「手術」という言葉に苦労しました。今は「オペ」という言葉も使いますから「オペでいいじゃん」と脚本家を恨めしく思ったものです。しかし、よく考えてみると「オペ」はあくまで医師や看護師の側で使う言葉であって、患者が「オペ」と言うのは違和感があります。それから何度も何度も練習してようやく自然に言えるようになりました。
 誰でも苦手な言い回しはありますから、何度も繰り返し口にして慣れるしかありません。稽古や本番前に首や肩の力を抜いて、舌や唇の運動をするのも大事なことです。私の場合は「ういろう売り」を暗記して毎日練習することでずいぶん滑舌に自信が持てるようになりました。
 
レッスン5 台詞のテクニック~言葉の五大要素

 これは前に紹介した「声の5要素」とは違います。西田先生に教えていただいた言葉における5つの要素です。
 
①句読(間)「……(3点リーダー・雨だれ)」の意味を考える。

休止符(読点)は脚本家が考えた間です。ただ、必要な場合もあれば無視して一気に言ってしまったほうがいい場合もあります。
終止符(句点)は台詞の一つの区切りですが、次の台詞との間によって、人物の心理を表現することができます。
古谷一行さんは私の好きな俳優の一人ですが、大事な場面の台詞と台詞の間を極端に詰めて言うことがあります。とても魅力的なので最近ではそれを待つようになってしまいました(笑)
 
 「……」は台本の中によく使われます。先生は「雨だれ」と呼んでいらっしゃいました。
 「……」は本来は「…」だけで3点リーダーと呼ばれる記号ですが、小説や台本では二つセットで使われます。私はこの原稿をワープロソフトの「一太郎」を使って書いていますが、最近は小説に特化したカスタマイズができて「……」「――」を縦書きセットで入力できるようになりました。これはとても便利です。
 
「……」には、考える(考えさせる)間、行動をする間、行動をうながす(待つ)間、それから言い止(さ)しの間などがあり、同じ記号であっても様々な意味があります。これをどう解釈して演じるかが役者の力量です。もちろん演出家の考えと異なる場合もあります。その時は演出家が指示したようにやるのが役者の仕事です。
 言い止しの場合は、その後に省略された台詞があります。台詞を言う人は必ずその台詞を想定しておきます。相手役がこちらの台詞を切るパターンでは、相手の台詞が遅れたら想定した台詞を言うつもりで発語します。自分で勝手に台詞を止めてしまってはいけません。切る側は力強く気持ちでばっさりと切るように台詞を言います。
 言い止しのもう一つのパターンは「頓挫法」です。ギリシア語には「アポリア」という言葉があって、途方に暮れ迷った人物が一歩も先に進めない状態を言います。
 シェイクスピアの『ハムレット』の有名な台詞。「To be, or not to be」は「……」こそ使われていませんが「アポリア」の代表だそうです。ハムレットは復讐をするべきだと分かっていながら、その覚悟がなかなかできない。
 日本で言うと芥川龍之介の『羅生門』の下人ですね。奉公先から暇を出された下人は途方に暮れて羅生門の下で雨やみを待っています。雨が止んだとて何の当てもありません。明日の暮らしをどうにかするためには、手段を選んでいるいとまはない。手段を選ばないとすれば……。下人の思考はここで止まります。その先の盗人になるよりほかはないという結論が見えているのに積極的に肯定する勇気が出ない。
 これらの「アポリア」をどう打開していくかが物語の主軸になります。
 
②力点(強調) 台詞の中で相手に分かってもらいたい部分を強調する。

 前半のレッスンでやりました。相手役と観客の心を揺さぶるために、ここを伝えたいという部分を強調します。
 私たちは日常の会話のなかで相手のすべての言葉を注意深く聞いているわけではありません。大体の言葉は右から左に流れてしまいます。しかし、肝心な言葉、心にとどまる言葉というものもあります。もちろん聴く方が引っかかる言葉であることもあります。しかし伝える側が言葉を立てて引っかかるように促すこともできます。

③抑揚(調子) 

 以前「声の5要素」レッスンでやりました。声の大小・高低・強弱・緩急・声色を駆使して心のあり方を表現します。
 どんなにいい声でも一本調子で語られたら飽きてしまいます。抑揚をつけることによって観客を引きつけます。
 
④音調(声色) 

 「悲しい台詞、楽しい台詞を意味から考えること。悲しそうではだめ。気持ちを入れるように」と先生はおっしゃいました。
 
⑤音律(リズム)

 「歌は語るように、台詞は歌うように」という言葉があります。ただ、普通のお芝居のなかで台詞を歌ってしまうと、内容が伝わらなかったり、リアリティに欠けたりという弊害もあります。「そこは歌わないで」と演出家が言う場合はそれです。
 余談ですが、マルセル・マルソーのパントマイム教室の最後に、マルソー先生はこうおっしゃいました。
「演技の間は常に心のなかに音楽が流れているようにしなさい。自然にリズミカルで美しい演技になります」
 独白などで、BGMがある時は曲に台詞をはめ込んでみるのもいいでしょう。私が初めて劇列車で演じた役は『ゴジラ』のレポーターでした。大島噴火の顛末とゴジラの出現を語るのですが、演出からBGMのこの部分ではこの台詞と細かく決めるように指示されました。曲の盛り上がりと台詞の盛り上がりを重ねてみると、実に気持ちよくしかも効果的に台詞を言えることに気づきました。
 
 西田先生いわく「正確に台詞を言うことも大切ですが、実感(こころ)を込めた台詞にすることも重要です。また、観客が好感を持ついい響きの声で表現できるといい。これらができると観客が自然と芝居の中に入ってきます(共感作用)」

 先生はよく「実感」という言葉を使いました。「実感」のこもった台詞は感覚だけでは言えません。
芝居に慣れてくると何となくで芝居ができてしまうようになります。そうではなくて、しっかりと台詞を意味を理解し、状況を想定して、なぜ楽しいのか、なぜ悲しいのかをつかんでこそ「実感」のある台詞を言えるようになります。
  
レッスン6 台詞の分析

①まずは台詞を読んで言葉の意味を理解する。
②次に台詞に込められた心理作用(心の動き・意志・考え・気持ち)を読み取る。
③心理作用からどのような生理作用(身体作用)が起こるか考える。
④さらにイメージをふくらませて、年齢、性格、季節、生活環境、時代などを把握する。

 西田先生いわく「虚構の世界を現実世界として生きるのが役者の役割である。そのためには台詞について①~④の手順をくりかえし、自分の役に現実感をもたせる「材料」とすること」

 ①「言葉の意味を理解する」のは当たり前のことのようですが、実際には意味を知らずに、あるいは間違った意味で理解して台詞を言っていることがあります。思い込みは禁物。少しでも怪しいと思ったら必ず辞書を引くようにします。
 ③の「生理作用(身体作用)」の研究が足りないと、その場の感覚だけで不自然な動きをしてしまいがちです。自分だったらこうするは意外に危険で、クセであることも多いので、日頃から多くの人を観察して、この役の人物ならこんな動きをするだろうと想像してみます。

 先生いわく「フィーリングだけで芝居をする人が多い。そういう演技は稽古のくりかえしの中でマンネリ化しやすい。逆に台詞を分析し『材料』を少しずつ積み上げて役作りのプランを練っていく方法だと、役を稽古の中で進化させることができ飽きることがない。
 また、いわく「またフィーリングだけの芝居では、演出家に『違う』と言われた時にどこが違ったのか考え直すことが難しい。しかし、『材料』を元にしていれば、どの『材料』が違っていたのかを検証しやすい」

 ④の「イメージをふくらます」ことについて先生は「性格は生活環境によって決まることが多い。つまり育った環境などで明るい暗いなどの大まかな性格が決まることがある。また、私達がこの現代の生活環境について何となく把握できているように、その時代の人もまたその時代の生活環境についてよく知っている。したがって、他の時代の人を演じる場合にはその時代の社会についての知識が必要になる」とおっしゃっていました。

 以上、西田先生のレッスン内容に私なりの解釈を加えて十回のワークショップを行いました。
 西田了先生は私が入団してからも、演出をするたびにワークショップを開いてくださいました。
「皆さんはすでにそれぞれが魅力的な役者ですが、さらにもう一段上の役者を目指すために不足していることを補いたいと思います」
 先生はワークショップのたびに、このように言ったくださいました。 先生は遠くに行ってしまわれましたが、私たちの心の中にはいつまでも先生はいらっしゃいます。今回、コロナによって公演が延期になったことはとても残念ですが、その替わりこうやって先生の教えてくださったことをなぞることができました。先生はもっともっとたくさんのことを教えてくださいました。むしろここから先が肝心なところなのかもしれません。でも、それはまた次の機会にしたいと思います。
 次回の「やまんば おゆき」は三十年前に西田先生が指導してくださり、座・劇列車を作るきっかけともなった作品です。先生の薫陶を受けた者として恥ずかしくない舞台を作って、天におられる先生にも観ていただこうと思います。
 ワークショップの内容をお読みになってくださった皆さんお付き合いいただきありがとうございました。伝わりにくい部分など多々あったかと思います。それらはすべて私(高平)の責任です。また、今回引用させていただいた鴻上尚史氏の『表現力のレッスン』『発声の身体のレッスン』は演劇初心者の方には最適なテキストだと思います。これを機会にぜひ読んでみてください。

最後の40分で『俺らってやっぱ天使じゃねえ?』を稽古しました。

今年最後なのでなるべく止めずに通してみました。通して見てみるとなかなか面白い作品になってきました。団員それぞれの魅力も少しずつ出てきたように思います。

来年は1月8日(金)から稽古です。なるべく台本を外して稽古してほしいと伝えました。舞台美術の案も提案されました。小道具類もそれぞれ準備してもらって、本格的な稽古に入りたいと思います。

今年もブログを読んでいただきありがとうございました。いつも文字ばかりで読みにくい内容でごめんなさい。

年末年始、コロナはもちろん風邪などもお引きになりませんよう。皆様のご無事を祈っております。また来年もよろしくお願いいたします。
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12月11日(金)の稽古です [稽古内容]

12月11日(金)の稽古です。

 稽古場の四街道公民館に前に立つと自動で測れる体温計が入りました。画面の枠に自分の顔をはめる位置に立つと自動で体温を測定してくれます。これまでは係の人がハンディタイプの体温計で測ってくれていたのですが、歩きや自転車で来ると顔が冷えているのか測定不能でした。首筋で何度か測定しても34度とか、あり得ない数値が出ます。寒くなるにしたがって測定不能の回数も増えていました。
 アルコール消毒も足で踏むタイプになり、どんどん設備はよくなりますけど、そんな設備がなくても利用できるように早くなってほしいものです。

 今回も冒頭にダンスをしました。私として時間もないし1回で済ませようと思ったのですが、皆さん踊り足りないということでもう1回やりました。マスクをして踊るのは苦しいけれど、やはり身体を動かすのは楽しいですね。

 第10回ワークショップ セリフのためのレッスン(前半)

1 台詞とは何か

 西田先生は次のように説明してくださいました。

◎思考、感情、意志の伝達(表現)の手段

 ①正確に発声する。→正確に音を出す。正確に口を開ける。
 ②音量のコントロール →相手の音の高さに合わせて話す。
 ③共鳴音 →からだを開いて口を大きく開ける。遠くまで声を響かせる。

 ①は主に滑舌(アーティキュレーション)の問題です。これまでは触れて来ませんでした。後半で少し触れます。
 ②もあまり触れて来ませんでした。自分だけの独善的な芝居にならないためにも、相手の台詞をよく聞くことが重要です。いかに相手に台詞を渡すか、いかに相手の台詞を受け取るか、これがスムーズに出来てはじめて、相手の台詞を否定する芝居もできるのだと思います。これも後半で少し触れます。
 ③これについては前回丁寧にやったつもりです。単に大きな声ではなく、よく響く声を出すにはどうするか、ということです。
 
2 台詞のレッスン 

レッスン1 ことば~言葉を立てる(→資料20「ことば」)

例 合田が上田と結婚するんだって(下線なし) 
合田が上田と結婚するんだって(「合田」に下線)
合田が上田と結婚するんだって(「上田」に下線)
合田が上田と結婚するんだって(「結婚」に下線)
合田が上田と結婚するんだって(「結婚するんだって」に下線)

①台詞の下線部を「強調」して(立てて)言います。
②ただ機械的に「強調」するのではなく、なぜそこを「強調」しているのか、4W(いつ・どこで・だれが・なにを)を設定して台詞を言ってみます。

 ワークショップの最初にやったレッスンです。このレッスンは何度やってもいいと思っています。西田先生も繰り返しやってくださいました。
 ①について
 何も説明さずにやると大抵の人は下線部を語気を強めたり大きい声で言います。もちろんそのやり方もありますが、前にやった「声の5要素」を使うと、わざと語気を弱めたり、ささやき声(ウイスパー)で言ったり、間を取ったり詰めたり、ゆっくり言ったり早口で言ったり、または声色を使ったりと色々な強調方法があります。それらを駆使して試してみることも表現の幅を広げるためには必要です。
 ②について
 置かれた状況と発話者の意図・心情によってどこをどう強調するかが決まってきます。強調部から逆に状況や意図を想像するのも大事な練習だと思います。ただし今回は省略しました。

レッスン2 感情表現トレーニング~状況をイメージする
              (→資料8「感情表現トレーニングⅡ」)

 例 (思い直して)(男)ほんとうに怒るぜ! でも、まあいいや……お互いさまだから……。
     (女)ほんとうに怒るわよ! でも、まあいいわ ……お互いさまだから……。

①( )内の感情を台詞にのせて台詞を言ってみる。
②どういう状況で言われた台詞なのか4Wを設定して言ってみる。

これも2度目になります。何度でもしつこく繰り返したいと思います。
 ①について
 役者が性別で二種類の台詞が用意されています。「感情表現トレーニングⅠ」はもう少し単純な感情だったと思いますが、Ⅱの法は(案外軽く)(急に鋭く)(思い出すように)など「これ感情?」というような難しい指定が並んでいます。例の場合は「でも」から「思い直」すのだと思いますけど、形だけだとなかなか難しい。自分ではやっているつもりでも聞いている人にうまく伝わりません。
 ②ついて
 そこで誰が誰に対して(「だれが」)どういうこと(「なにを」)を怒っていて、なぜ思い直したかを想像してみます。レッスン1では省略しましたが、ここではそれぞれの台詞の担当者を決めて、時間をとって状況を想像してから発表してもらいました。
 この台詞については妻が夫の浮気を怒っているのだそうです。何度も同じことを繰り返している夫に対して「ほんとうに怒るわよ!」と言いながら、「お互いさまだから」と自分も浮気していることを匂わせて夫を不安にさせようとしているんだそうです。面白いですね。妻の方が一枚上手。そう考えると「ほんとうに」という大袈裟な言い方にも作為が感じられますね。ここから広げていくと一篇の脚本や小説ができそうです。
 本来は台本にはこういった状況はある程度説明されていて、役者はそれを読み取って台詞を言います。しかし、状況はともかく人物の心情や意図のほとんどは自分で推量するか演出家の指示に従うかしかありません。もちろん最終的には演出家の指示の通りに演じるのが役者の仕事ではありますが、どういう状況からどんな意図を持ってどんな心情で演じているのかを自覚して演じるのとそうでないのとでは雲泥の差があると思います。自立した役者、創造的な演技者になるためには必要なレッスンだと思います。
 それにしても、担当者の想像のほとんどが浮気をしている夫という設定なのには驚きました。男と女の普遍的なテーマなのでしょうね。

 次回は今年最後の稽古です。第10回の後半をやります。

 稽古後半は『俺らってやっぱ天使じゃねえ?』の稽古をやりました。

 この公演は5月8日(土)に四街道公民館ホールで上演することになりました。ただし、会場の都合で変更になるかもしれません。コロナの中で何か1つやろうという意地のような公演です。よろしければ観てやってください。

 この本は映画『俺たちは天使じゃない』を下敷きにしています。有名な『カサブランカ』のマイケル・カーチス監督の映画です。主演も同じハンフリー・ボガート。ロバート・デ・ニーロ主演でリメイクされているので、そちらを御存知の方も多いようです。脚本自体は映画の一部を借りているだけですけど、映画を御存知の方はぜひ観たいと言ってくださいます。よろしければ映画もご覧ください。
 
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12月4日(金)の稽古です。 [稽古内容]

この日は第10回ワークショップの予定でしたが、5月公演の話し合いで時間がかかってしまったので、久しぶりにダンスをやりました。

このダンスは『カリホルニアホテル』のエンディングでみんなで踊ったものです。振付は川島とも子さんにお願いしました。私も覚えているか不安でしたが、稽古前に動画を何度か観たら思い出しました。

「久しぶりに踊りましょう」と提案したところ、乗り気の方が多かったので何度か踊りました。やっぱりダンスは楽しいですね。ストレス解消になりました。

ダンスの後は『俺らってやっぱ天使じゃねえ?』の稽古をしました。

『俺らってやっぱ天使じゃねえ?』公演の期日は5月9日(日)の予定です。
 ただし会場の都合で8日(土)の可能性もあります。
会場は四街道公民館のホールです。

当初予定していた会場と違うこともあり、また感染症予防のためにも演出を変える必要が出てきました。試しにやってみましたが、やはり根本的に考え直す必要がありそうです。

ダンス楽しいから来週もやろうかな。
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11月6日(金)の稽古です。 [稽古内容]

11月6日(金)の稽古です。

今日は男子高校生が見学に来てくれました。最近、見学の人や遊びに来てくれる人が続いて楽しいですね。劇団員もテンションが違います。

 第9回ワークショップ 

1 ニュートラルな身体をつくる(呼吸と発声の準備)

 ニュートラルな身体とは?
・私たちが知らず知らず身につけてきたクセを取り除いた人間本来の自然な身体
・必要な部位以外の力が抜けてリラックスした身体
・どのようにも動くことができる自由な身体
・呼吸や発声を妨げない身体

 レッスン1 首と肩の体操とストレッチ
 
①体 操
 ・首を左右3回ずつ回す(首の重さは体重の約10㌫。力を入れ  ず首の重みで回す)
・指先を肩に当てて肩を回す。前後10回ずつ。
②ストレッチ
 ・首の前後、左右のストレッチ。左右が利かない人は反対の手を伸ばすと利きがよくなります。さらに利かない人は反対の腕を曲げて脇を締めると利きがよくなります。
・腕の十字ストレッチ(上腕二頭筋)、腕を上げて肘をつかみ上腕三頭筋も伸ばします。

(ポイント)特にストレッチは自分の部位との対話だと思って、今日の部位の伸びの具合を問いかけながらやりましょう。ゆっくりと呼吸をしながら1部位ごとに最低でも20秒間。

 レッスン2 上半身の脱力 

  ①ロールアップ

  ②ロールダウン

ロールアップとロールダウンを3回程度繰り返す。ゆったりとした呼吸を忘れずに。これはパントマイムでもやりましたけど目的が違います。パントマイムは身体をきめ細やかに使うためでしたが、今回は上半身のリラックスが目的です。どちらにしてもやって損のないレッスンです。

(ポイント)いわゆる「背骨」は首の後ろの7つの頸椎(けいつい)、肋骨の後ろの12の胸椎、さらに腰にある5つの腰椎、全部で24本の骨で構成されています。これらを一本一本意識しながら曲げ伸ばしましょう。うまくできない人はパートナーに指先で次々に骨を触ってもらいます。ゆっくりと呼吸しながら行いましょう。

 レッスン3 上半身スイング~周囲に人や障害物がないか確認してやること。

①上半身スイング

②上半身ワイドスイング

 これも上半身のリラックスが目的です。どうしても力が入ってしまって、初回からうまくできる人はなかなかいません。具体的な方法は鴻上尚史氏『発声と身体のレッスン』をご覧ください。

2 呼吸

 レッスン1 腹式呼吸とは何か?
 
 ・人間の肺は上方が小さく、下方が大きくなっています。だから肩や胸の筋肉を動かす肩式、胸式呼吸では十分な空気を肺に取り込むことができません。肋骨もそれを妨げています。
 ・腹式呼吸では、腹筋に力を入れることで横隔膜を押し上げ、肺の下方向から圧迫して呼気を十分に出し切ることができます。すると反動でたくさんの空気が肺に吸い込まれてきます。このたくさんの空気が豊かな深い発声の素になるのです。
 ・最近は腹式にあまりこだわらなくなってきました。胸式も同時に使えばさらに多くの空気を取り込ますからね。
 ・骨盤底にも筋肉があり、上の横隔膜と連動していると考えられています。したがって骨盤を真っ直ぐにして、上下2つの筋肉を連動させることが大切だそうです(参考 鴻上尚史氏の『発声と身体のレッスン』)

 レッスン2「横隔膜モデル」で横隔膜を意識する

 ①両肘を曲げ、身体の前、肋骨の下あたりで両方の指先をつける。手の甲は上。これが「横隔膜モデル」である。これを本物の横隔膜と連動して動かしてみよう。
②ゆっくり息を吐きながら、腹筋に力を入れて腹部を圧迫し、「横隔膜モデル」を押し上げてみる。実際の横隔膜も上がっているはずである。
③完全に息を吐ききったら、腹筋をすっとゆるめる。そして両手で作った「横隔膜モデル」も下げる。この繰り返し。

 肺に空気を取り込むほど横隔膜が下がりました。その横隔膜の動きを意識する練習です。横隔膜が下がるとお腹や脇腹、背中が張って膨らむように感じます。これは横隔膜の下にある内臓が圧迫されるからです。骨盤が正しい位置にあると内臓が骨盤底に収まってさらに肺に空気が入ります。


 レッスン3 呼吸の訓練

 ①呼吸の基本

 ②呼吸の分割
・呼気を吐き切ったら、一気に息を入れゆっくり息を吐く。3回ほど繰り返す。
・次にまたゆっくりと息を吸い、リーダーの手の合図で、一気に「はっ」と吐き切る。これを2回繰り返す。
・またゆっくりと息を吸い、今度は3回に分けて「はっはっはっ」と息を吐く。この時に息継ぎをしてはいけない。必ず1呼吸を3つに分割して息を吐く。2回繰り返す。
・またゆっくりと息を吸い、6回に分けて息を吐く。こうやって9回、12回、15回と2回ずつ繰り返していく。

 (ポイント)12回、15回となると息の分割が難しくなります。息をなんとかやりくりして吐くのがポイント。台詞は読点ごとに1呼吸で言い切るのが原則です。読点は台本の意味や感情の区切でもあるので、自分の都合で勝手に息継ぎをすることで意味や感情を正確に伝えられないこともあります。これは息をコントールする演習です。これは西田先生に教えられた練習方法。

3 発声と滑舌

 レッスン1 発声の準備

 ①ハミングレッスン

 ②S音レッスン

 ③Z音レッスンで丹田を知る

 ④声帯のストレッチ

 これも詳細は鴻上尚史氏の『表現力のレッスン』をご覧ください。発声前のウォーミングアップとして最適です。S音レッスンはみんなで長さを競いました。第1回チャンピオンは林君です。

 最後に声を出して本日のワークショップを終わりました。

 後半は『俺らってやっぱ天使じゃねえ?』の稽古をしました。見学の男子高校生が代役をしてくれました。
 次回は作業があるためワークショップは中止します。

↓ 参考 『表現力のレッスン』鴻上尚史


表現力のレッスン

表現力のレッスン

  • 作者: 鴻上 尚史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/10/21
  • メディア: 新書



↓ 参考 『発声と身体のレッスン』鴻上尚史


発声と身体のレッスン 増補新版 ─ 魅力的な「こえ」と「からだ」を作るために

発声と身体のレッスン 増補新版 ─ 魅力的な「こえ」と「からだ」を作るために

  • 作者: 鴻上 尚史
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2012/03/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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10月30日(金)の稽古です。 [稽古内容]

10月30日(金)の稽古です。

この日は前回も来てくださった手話通訳の方が続けて見学に来てくれました。それと『やまんば おゆき』の仲間てるこさんが遊びに来てくれました。

第8回ワークショップ

 この日はパントマイムのテクニックについて紹介しました。

1 ニュートラルなリラックスした身体作り

 癖のない(ニュートラルな)身体を作ること、リラックスした身体を作ること。これはパントマイムの基本です。そのためのレッスンをいくつか紹介しました。

 レッスン1 ハッピーフェイスとエアフック

 豊かな表情はパントマイムには欠かせない要素です。癖がなく自由に動く顔を作るレッスンです(ただし、マスク・フェイスシールド着用だったので今回はやりませんでした)

 ①顔の体操 口を大きく開く・唇をすぼめて突き出す、鼻の下を伸ばす・狭める、目を大きく開く・細める、小鼻を膨らます、眉を上げる・下げる、眉の間を開く・閉じる、頬の上げる・下げるなど、顔の様々な筋肉を使う。
 ②顔ジャンケン
 グー →顔のすべてのパーツを中央に集めるイメージ
 パー →顔のすべてのパーツを外に広げるイメージ
 チョキ → 顔の上半分を右斜め上方に引っ張り上げ、下半分を左斜め下方に引っ張られるイメージ
 顔ジャンケンのトーナメント戦。チャンピオンを決めましょう。
 ③ハッピーフェイス 口角を上げた美しい笑顔を作ります。
 3歳くらいの子どもに見せて笑顔を返してくれるような顔を作れとよく言われます。自然な笑顔がニュートラルな顔になるといいですね。

 身体の癖を取るレッスンです。

 ④エアフック 空中にフックがあることをイメージして、そのフックに首の後ろを引っかけるようにイメージします。身体をしっかり伸ばし、足裏は床に着けます。ニュートラルに美しい立ち姿をイメージします。
 ⑤骨盤の位置を整える 前回もやりましたが、骨盤の位置に癖がある人がかなりいます。普段の骨盤の位置を確認し、正しい位置に直しましょう。でも無理は禁物。まずは骨盤を前後、左右、回転と動かして自由に動くようにします。

  レッスン2 アイソレーション(独立運動)

 身体の一部を他の部分から独立させて動かす(止める)ことはパントマイムのテクニックでは欠かせません。
 ここでは首、拳、腕を独立させて動かす(止める)練習をしました。
 まとめとして2人一組で「彫刻」を作るゲームをやりました。立っているパートナーの身体の部分を動かして彫刻作品を作るゲームです。最後に彫刻ごとのテーマを発表してもらいます。彫刻になる側はけして逆らわないこと、しゃべらないことがルールです。彫刻を作る側の人はけして関節を逆に曲げないこと、余計なところに触らないことがルールです(笑)

 レッスン3 インクリネーションとローテーション(分解運動)
 
 身体を細かく滑らかに動かすこともパントマイムでは必要になります。「インクリネーション」は「傾斜・傾き」の意味で身体を前後、左右に傾ける練習です。「ローテーション」は「回転」という意味で、完全に傾けた身体を元に戻すことです。
①(インクリネーション)頭↓首↓背骨の順でゆっくりと身体を前傾します。首から背骨にかけては骨の1つひとつを数えるように意識します。最後は腰から上を前に倒して上半身を脱力します。
 ②(ローテーション)①の状態からゆっくりと起き上がります。骨を1つひとつ積み上げることを意識します。最後に頭を首の上に載せて終わります。    
 ③前後がスムーズにできるようになったら左右も試してみましょう。インクリネーションの最後は傾けた方の膝を曲げます。
 ④後ろにも傾けてみましょう。無理して転ばないように注意してください。

 身体をなるべく細かく動かすことを意識しましょう。上半身のリラックスは声を出すためにも必要です。

2 イリュージョン(パントマイムテクニック)

 レッスン1 固定点

 身体の一部を空中に固定するレッスンです。ポイントは固定した部分のテンション(緊張)、それ以外の部分のリラックス(弛緩)です。この差がはっきりしているとお客さんに実際にはないものが見えてきます。

 ①コップ 何度かやっていますが、コップを持って中に注いだ飲み物を飲むレッスンです。コップを持つ前には指先も手もリラックス、持った時にはテンションです。指や手以外の部分はリラックスです。ただし、コップが重い場合には手首、二の腕まで緊張させます。コップから手を放す時にもテンションからリラックスへの変化をはっきり見せます。飲み物を飲んでコップが軽くなると緊張する部位も変化します。
 ②棒 立てた棒をつかんでいるように見せるイリュージョンです。棒を掴んだ拳を緊張させて固定させ、それ以外の部分をリラックスさせて動いてみます。棒を地中に押し込んだり、抜いたりしてみます。
 ③手すり 二の腕を横にして固定し手すりを作ります。どういう場所の手すりなのか状況をイメージしてください。
 ④ドア これも何度かやっています。ノブを握って固定します。
 ⑤壁 壁に掌を置く前のリラックスから置いた時のテンションへの変化が大切です。掌を離す時にはテンションからリラックスです。両手を一度に動かすと壁が消えてしまうので必ず片方ずつ動かします。
 初心者の人はどうしても両手の間が狭くなってしまうので、なるべく広くするように心がけましょう。
 壁に触りながら上下左右に動いてみます。コツとしては動く方向と逆側に掌を動かすと止まっているように見えます。
 慣れてきたら壁を押したり叩いたりしてみます。押す時には胸を前に出しましょう。手だけでなく体幹が動くと本当らしく見えます。顔の表情も大切です。叩く時には足裏で床を叩いて音を出します。
 テクニックだけを見せる場合には掌を大きく開き、指先まで緊張させますが、リアルに見せるには手掌だけに力を入れ指は少し曲げてリラックスさせます。
 壁の材質(煉瓦・土・木・ガラス・アクリル板など)やどうして壁が邪魔なのか、向こうに何かあるのかなど状況を意識すると作品になります。
 最後はそれぞれ壁を壊して突破してもらいました。
 
 レッスン2 重心移動

 重心移動もパントマイムのテクニックには欠かせません。重心を移動させる場合、重心をごまかす場合があります。特に重心をごまかす場合には曲げて体重がかかっていないように見せるのでかなりきついです。

 ①左右 片足を爪先立ちにします。もう片方は足裏を床につけたままです。この時に身体(上体)も自然に斜めになります。次に床につけた足も爪先立ちにします。身体は直立します。最初に爪先立ちした足を床につけます。この時も身体が自然に斜めになるようにします。最後に爪先立ちしている足を床につけます。これを滑らかな一連の動きとして繰り返します。逆もやってみます。
 ②ロープ ロープを両手に持ちます。右利きの人は右側からロープを引くようにイメージします。両手でロープを引く時に腰を右に動かして重心を移動します。ロープを持ちかえる動作に合わせて腰を左に移動して重心を元に戻します。
 スムーズにできるようになったら、引く瞬間に両腕に力を入れます。この緊張によって引き始めが観客にはっきり伝わります。
 重くてなかなか引けなかったり、逆に引かれたりしてみます。引かれる時には右足の爪先と踵を踏み換えてスライドさせます。
 ③マイムウォーク これも前回紹介しました。練習してもらいました。膝を曲げた方に体重がかかるのでかなりきついです。5分間を目標に散歩ができるといいですね。

 今回、紹介したのはパントマイムのテクニックなので、実際にお芝居の中で使えないかもしれません。ただ、身体の使い方や見せ方には共通するところもあると思います。
 無対象演技、パントマイムはここまでにして、次回はまた声と発声に関するワークショップをやります。初回は「呼吸と発声」てす。
 
 この日は『俺らってやっぱ天使じゃねえ?』の稽古は中止しました。
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10月23日(金)の稽古です。 [稽古内容]

10月23日(金)の稽古です。

この日は手話通訳をしている若い男性が見学に来てくれました。

まずは第7回ワークショップです。

第7回ワークショップ

 首、肩のストレッチの後、胸と骨盤を動かしてみました。
 胸を前後、斜め前と後ろ、そして左右に動かしてから、それらを組み合わせて回します。このとき肩や腰がなるべく動かないように注意します。
 手は容易に動くので、あまり手だけの動きに頼るとどうしても嘘っぽい動きになります。でも、そのときに体幹(胸)を一緒に動かしてやると気持ちが入った動きのように見えます。例えばパントマイムで「壁」を演じるとき、手だけで押すのではなく胸で押すとさらに頑丈な壁に見えてきます。
 次に骨盤を動かします。前後、左右に動かした後で回します。骨盤も「ロープ」などのパントマイムで使われますが、骨盤の前傾や後傾を使ってキャラクターを作ることもできます。例えば威張って歩く人は骨盤を後傾させます。また兵士の礼やハイヒールを履いた女性を演じるときには前傾を使うことができます。骨盤の位置に癖がある人は多いので、自分で最もニュートラルな骨盤の位置を知っておくことも大切です。
 また、最近は骨盤底にも筋肉があって、上の横隔膜とこの骨盤底の筋肉が連動して呼吸を支えていると言われます。正しい位置に骨盤がないと深い呼吸ができないようです。

 パントマイムレッスン

 復習として「コップ」を持ち上げて飲むマイム。ドアを開けて入るマイムを練習しました。
 その後、西田先生にいただいた資料のマイムエチュードをやりました。

 女性には次の課題をやってもらいました。

 これからデートにでかける。支度をする。何を着て行こうかアレコレ迷う。いろいろ着てみる。出かけて行く。財布を忘れて取りに戻る。……待てよ。日を間違えたらしい。明日だった……。

 動作から気持ち(心情)がはっきり見えることがポイントです。何をどう表現したらよいでしょう。少し細かく見てみましょう。

「これからデートにでかける」
 デートに行くという状況と気分をどのように表現したらよいでしょう。
「支度をする」
 デートに行くということを入念な化粧や髪型を気にするという、つまり「支度」で表現する人が多かったです。マスクをしていて表情が見えませんから、身体全体で昂揚したウキウキした気分を表さなければなりません。鏡に向かって微笑んで見せたり、何度もやり直したり、デートに行く女性がどう行動するかを考えてみましょう。
「何を着て行こうかアレコレ迷う」
 クローゼットから洋服を選んで一着ずつ鏡に自分を映して見ると迷っている感じが出ますね。できれば鏡は正面(観客側)にあった方がいいです。
 こういうエチュードをやると舞台上でどう動けば観客から見やすいか、効果的に見せることができるかを瞬時に判断する力をつきます。インプロでなくても常に客観的に自分を見ることが大切だと思います。
「いろいろ着てみる」
 着た服の処理をちゃんとしていますか。団員の中には着た服はいつも床に脱ぎっぱなしという人もいましたけど、それならそれではっきり脱いで放ります。日常無意識にやっていることほど、舞台上では意識してやらないと演技になりません。
 ベッドとかイスに掛けてもいいし、クローゼットに戻してもいい。大切なのは処理をきちんとすることです。特にマイムの場合は持っている物が消えてしまうことがよくあります(笑) 
 これはどうかしら? 駄目だわ。これは? これも駄目……。女性はデートの相手に少しでも高く評価されたいのか、あるいはその日の気分に合った服を着たいだけなのか分かりませんけど、とにかく服選びは真剣ですよね。この動きをしっかりやるとデートに向かう女性の熱量がはっきりと観客に伝わります。
 よし、これにしようという決断もきちんと表現します。
「出かけて行く」
 女性の場合はバッグを持ちますよね。さすがにこれを忘れる人はいませんでしたが、4人中2人が靴を履かずに外に出ました。服に合わせて靴も選びましょう。本当ならバッグもアクセサリーも悩んで欲しかったですね。洋服が決まればそれほど時間はかけなくていいですけど、こういう細かいところに表現力の差がでます。香水なども重要なアイテムです。
 ドアを出ましょう。鍵をかけます。鍵はどこから出してどこに入れましょうか。どういうバッグを持っているかによっても違いますよね。デートに行く時にどんなバッグを選ぶかも考えください。
 歩き出します。マイムウォークを使いたいところですけど、できなければその場で足踏みでもいいでしょう。デートに行く女性の気取った感じ、昂揚した感じの歩き方を工夫しましょう。
 余談ですが、マリリン・モンローは『ナイアガラ』という映画で、魅力的な歩き方をするためにヒールの左右の高さを変えたそうです。そうやって生まれたのが「モンロー・ウォーク」。マイムで出来たらいいですねえ。
「財布を忘れて取りに戻る」
 まず気づきです。財布を忘れたという気づきをきちんと表現しましょう。何かきっかけがあってもいいですね。暑くてハンカチを取り出そうとした時に気づいたとか、電車に乗るのにスイカを取り出そうとして気づいたとか。気づいたらバッグの中を隈無く探してください。気取っているほど、ここでの慌てブリが生きます。そして、部屋を出て来たよりも早く慌てて戻ります。鍵も急いで開けようとします。バッグの中から鍵がなかなか出て来なかったりするとリアルですよね。鍵穴にもうまく入らないとか。
「待てよ。日を間違えたらしい。明日だった……」
 これも気づきです。どうやって気付くのかが難しいですね。玄関にあるカレンダーを二度見するとか、やはり何か手がかりがあると分かりやすいですね。    
最後に「明日だった……」の後の気持ちをしっかり作りましょう。拍子抜けしたのか、がっかりしたのか。どこかほっとしたのか。ここまで来ると自然に感情があふれるはずです。

 エチュードの発表まであまり時間をとりません。動きながら考える必要があります。役者は台詞だけ言っていればいい訳ではありません。ワークショップですでにやったように相手の台詞を感じることが大切です。そして他の役者たちがどんな風に動いているのかをしっかり見ることも必要です。さらに、この日のレッスンでは自分の動きを客観的に細かく観察する訓練になります。
世阿弥は、能役者の家に生まれた子供には、形などよりも舞台に上がったら汗をかくことをまず教えろと言っています。舞台上で楽をしないこと。常に神経を研ぎ澄まして相手を感じ、自分を見ることが役者の心得として必要なのではないでしょうか。

男性の課題も紹介しておきましょう。

 いくら待っても彼女は来ない。もう30分待った。携帯電話を取り出し、まわりに気兼ねしながらキイを押すと留守電受けになっている。めんどうくさいから伝言を入れずに切る。よし帰ろう。店のドアを開けようとする。やっと来た。

 こちらは喫茶店でデートの相手を待っています。30分という時間を表現するのが難しいのですが、私はコーヒーを一杯飲み干す動作で表現してみました。コップで水を飲む、コーヒーを飲むという基本のマイムが使えるエチュードです。
 少し前のエチュードなので喫茶店で電話をしていますが、今だったらスマホでLINEに書き込めば済むことです。でも、できればこのまま演じてください。与えられた芝居が現代とは限らないからです。役者はどんな時代にも対応できなければいけません。
 男性の気持ちの変化をどういう行動で表現するのか考えてみてください。特に最後の「やっと来た」は呆れているのか、怒っているのか、嬉しいのか。はっきりと表現しましょう。

残りの時間は『俺らってやっぱ天使じゃねえ?』の稽古をしました。一応、流れはできたので、あとは台詞を入れてもらって繰り返し通すだけです。来年5月上演を目標にしていますが、もっと早くに1度上演してみたいものです。

見学の方は手話をやっていらっしゃるだけあって、手の動きがとても綺麗でした。エチュードにも参加してもらいましたけど、堂々と演じていました。前にも書きましたが外部の方が来てくださるととてもいい刺激になります。もっと見学者来てくれないかなあ。 
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10月18日(日)の稽古です。 [稽古内容]

この日は第6回ワークショップをやりました。
参加者は6名。団員の半分です。私のワークショップの人気がないから?ちょっと不安がよぎりますが(汗)、季節の変わり目ということで体調を崩している人も何人かいます。無理は禁物。健康が第一です。

劇団のモットーは「一に健康、二に家庭、三が仕事で、四芝居」

嬉しいことにこの日は『やまんばおゆき』にも参加してくれている、たっしーこと田代さんが遊びに来てくれました。

第6回ワークショップ
 
 西田先生は役者は「一声二振三姿」とよく言っていらっしゃいました。役者にとって最も大事な「声」については、これまで5回のレッスンをしてきたので、今回からしばらくは「振(ふり)」つまり「動作・所作」と「姿」についてレッスンをしようと思います。
 
 まずは基本の姿勢を確認するために、以前ある劇団の講習で習ったレッスンをやってみました。
 
①AB2人が1組になって、Aが前に立ち、BはAを観察します。
②Aは膝を抱えてしゃがみ頭も下げます。これが「基本」の姿勢です。
③リーダーが「水平」と言ったらAはできるだけすばやく立ち上がって、手を床と水平に開き、脚もなるべく開きます。
④BはAの腕が水平になっているかを確認して注意してあげます。
⑤リーダーが「基本」と言ったらまた②の形に戻ります。
⑥もう一度「水平」という号令で③の形になり、Bがそれを確認します。
⑦「基本」の姿勢に戻り、リーダーが「45度」と言ったら、Aは両腕を水平から45度下げた姿勢を取ります。
⑧Bが確認します。⑦⑧も2回やります。
⑨リーダーが「直角」と言ったら、Aは水平の形から両腕の肘から上を立てます。掌は互いに平行です。
⑩Bが確認して、⑨⑩も2回やります。
⑪同じように「対称」を2回やります。身体の中心線で対称になればどのような形でもかまいません。
⑫最後は「非対称」の自由演技です。どんな形でもいいので左右が非対称になる形を連続して5ポーズ作ります。
 
 ダンスや体操をやっている人は、自分の持つ姿のイメージと人が見る自分の姿を一致させる訓練をしているので、このレッスンは簡単にできるはずです。しかし、そういう訓練をあまりしていない人は、自分でやっているつもりでも、人からはそう見えないことが多いのです。自分の持つイメージと実際に人から見られる姿を一致させる。これが自在にコントロールできる姿を作る第一歩です。
 
 次に「歩き」のレッスンです。
 
 色々な「歩き」をしてもらいます。
 参加者の半数が縦に列になって歩きます。もう半数の人はそれを観察します。
①普通の歩き
②早足
③ジョギング
④坂を上がる、下りる
⑤階段を上がる、下りる
⑥散歩をする
⑦石につまずく
⑧滑る
⑨考えながら歩く
⑩きどって歩く
⑪水たまりに片足がはまる
 
 ①から⑪までをリーダーの指示でやってもらいます。観察している人はおかしなところがあったら指摘します。
 このレッスンの途中、オプションで「スキップ」「ツーステップ」をやってもらいました。劇団員は全員ができましたけど、若い人の中にはできない人もいるそうです。そう言えばスキップとかツーステップは習ったことがありませんよね。遊びの中で身につけたものかも。
 ④の「坂を上がる」、⑩の「きどって歩く」に関連して、「プロフィールウォーク」と「プレッシャーウォーク」の話練習をしました。どちらも移動せずに歩いているように見せるマイムのテクニックです。「プロフィールウォーク」は『天井桟敷の人々』という映画の中で主人公のバチスト(演じているのはジャン・ルイ・バローというパントマイミスト)が披露している歩きです。足を前に蹴り出すような歩き方なので、西洋人がきどって歩いているように見えます。主に横から見せるので「プロフィール(横顔)ウォーク」と呼ばれます。「プレッシャーウォーク」の方はマルセル・マルソーがマイケル・ジャクソンに教えた映像が残っています。それが「ムーンウォーク」の元になったという説もあります。前かがみになり、向かい風の中を歩いているような歩きです。坂道に慣れた日本人の歩き方です。これはなかなか難しくて、きちんとできる人は少ないです。
 ⑤の「階段」、⑦「つまずく」についてもマイムのテクニックを紹介しました。
 
 歩きまねレッスン
 
①Aは意識しないで普通に歩く。
②BはAの後ろについて、Aの歩き方を徹底的にマネして歩く。
③観ている人達は、Bのマネしている間、マネがよりリアルになるように指摘してBを助ける。
④マネが完成したら、BはAの後ろから「オッケーです」と伝える。
⑤AはBの声を聞いたら、横にずれて歩くのをやめる。
⑥Bはそのまま歩き続ける。
⑦Aは、歩いているBを見て、自分の歩き方の癖を知る。
 
 自分の歩き方の癖を知り、それを直してニュートラルな歩き方ができるようにするレッスンです。恥ずかしいと思う人が多いのですが、すべてにおいてニュートラルが分かっていないと役の造形は困難です。逆にニュートラルがつかめていれば、どんな人間にもなれると思います。このレッスンは鴻上尚史氏の『表現力のレッスン』から拝借しました。
 
 無対象演技レッスン
 
①テーブルの上の飲み物が入ったコップ(グラス)をとって飲みます。そのコップをテーブルの上に戻します。
 
 たったこれだけのことですが、西田先生は何度もこのレッスンを繰り返しました。そして「これが演技の基本です」ともおっしゃっていました。
 1回やってから、状況を想像してもらいました。4W、つまり、いつ、どこで、だれが、なにを、だけではなく、コップ(グラス)の形状、素材、中身は何か、どのくらいの量が入っているのか、冷えているかぬるいか、自分はどのくらい喉が渇いているのか、テーブルはどんなテーブルか……などを想像してもらいます。その上でもう1度やってもらいました。
 次に、持つときの指の動き、重さをどこで支えるか、手首が肘か、置くときにはまずコップの底をテーブルに着地させて置く、そのあとどうやって力を抜くか……など細かく想像してやってもらいます。
 飲み物の匂いや刺激、コップを持った手に伝わる冷たさなど、もっともっと細かく想像することもできます。
 熱い飲み物でもやってもらいます。
 最後は何人か前に出てやってもらい。観ている人がどう見えたか発表してもらいました。
 
②ドアを開けて入る。
 
 これも簡単そうで実は難しい無対象演技です。しかも演劇では使う機会が多いですよね。次の演目『俺らってやっぱ天使じゃねえ?』でも使うことになりました。
 1人で1回だけドアを開け閉めするだけならいいのですが、複数回、または複数の人間が使う場合には、ドアとノブの位置をかなり厳密に決めておく必要があります。こういうところの手を抜くと、観客がせっかく浸っていた想像の世界を壊してしまうことになるからです。
 パントマイムのテクニックには「ドアを開けて入る」という型があります。これさえ身につければ、どんなドアでも応用できるので紹介しました。
「泥棒」のエチュードをやりました。1人ずつ泥棒になって部屋に入ります。そして何か一つ盗んで部屋を出るというものです。続けて何人かがやりますけど、前の人が盗んだ品物はもうありません。他の物を盗みます。
 箪笥の中のお金、クローゼットの中の鞄、絵の裏に隠したへそくり、冷蔵庫の中の食べ物など、楽しく色んなものを盗みました(笑)
 面白かったのは1人がクローゼットの帽子をかぶって気に入らなかったのを、次の人もかぶってみたり、最後の人がそれを気に入って盗んだりしたことです。これだけでも一つのコント作品になりますよね。
 このエチュードの原型は、1人が部屋に入って何か一つの行動をして、次の人は同じ行動をしてから、さらにもう一つ何かの行動をします。つまり最後の人は部屋でやったすべての行動を覚えていなくてはならないので、大勢でやるとかなり難しいエチュードになります。でも、全員で一つの想像の部屋を完成させることができるのでかなり面白いエチュードになりますよ。
  
③イスに座る。
 
 本物のイスに座って状況を想像しながら演技をしてもらいます。途中何かのきっかけでイスを立って去ります。何をやっていたかを見ていた人達に言ってもらいます。
 これを数人やります。
 次にイスを2つにしてベンチに見立てます。AB2人組を作って、まずはAが座り状況を想像して演技をしています。Bはそれを見ていて何をしているか分かったら出ていってAに即興の演技を仕掛けます。結末は2人に任せます。見ていた人に何をしていたかを言ってもらいます。BはAが何をしていたと思ったか、実際にAは何をしていたかを言ってもらいます。
 今回は時間がなくてできませんでしたが、ここにさらにCを投入すると面白いです。もちろんDもEも投入できます。次回はこれをやってみようと思います。
 実際のお芝居でもそうですが、相手の台詞を聞くことと同時に相手が何をしているかをしっかり見るというのは演技の基本です。時には後ろにいる人の演技さえも感じなければならないことがあります。
 余談ですが、江戸時代の徳川家の剣術指南柳生但馬守宗矩が能を鑑賞したときのことです。『筒井筒』という演目だったそうですが、宗矩はある場面で役者の気配が微妙に変わったのを感じたそうです。後で役者にその話をすると「実は井戸の中に枯れ葉が一枚落ちているのを見つけて動揺してしまったのです」と告白したそうです。宗矩の剣士としての並外れた集中力を伝えるエピソードです。殺し合いをする武士にとって相手に集中できるかどうかは命にかかわることです。能が武士のたしなみだったのには、おそらくそういう意味合いがあったことでしょう。
「見る」ということは誰でも同じようにできると思いがちですが、集中力や想像力の違いによって、全く異なるものを見て感じているということもあるということだと思います。

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