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9月18日(金)の稽古です。 [稽古内容]

西田了先生に教えていただいた基本練習を復習することにしました。

西田先生は私たちの劇団の母体となった市民講座の講師であり、30年前四街道市民が上演した『やまんば おゆき』の演出家です。その後も脚本を書いていただいたり演出をお願いしたりたいへんお世話になりました。演劇の基礎を数ヶ月かけて指導していただいたこともあります。

本公演が延期になったこともあり、これから数ヶ月の間、先生に教えていただいたことをもう一度おさらいしようということになりました。

今日はその1日目ということで、

①台詞の言葉を立てる(強調する)
②感情表現のトレーニング

について稽古をしました。

①台詞の言葉を立てる(強調する)

私たちは日常の会話の中ですべての言葉を平板に話すことはあまりありません。台詞のほとんどは誰かに向かって目的を持って発せられるものです。相手にこう動いてほしい。相手にこう感じてほしい。目的は様々ですが、自分の発言の中のどの言葉を強調すれば、目的を達成できるかを私たちは工夫して発しています。

具体的な稽古方法としては決まった台詞の一部分に傍線を引いて、その傍線の部分だけを立てて(強調して)台詞を言います。

 ねえ聞いた? 林君が酒井さんと結婚するんだって

という台詞なら、

 ねえ聞いた? 林君が酒井さんと結婚するんだって

ねえ聞いた? 林君が酒井さんと結婚するんだって

 ねえ聞いた? 林君が酒井さんと結婚するんだって

のようになります。

ところが、強調というとほとんどの人は傍線部を強く言おうとします。西田先生は「声の5要素」ということをよく言っておられました。

声には強さ、速さ、高さ、間、声色という5つの要素があります。どうしても強さばかりを使いがちですが、時には速く、あるいは遅く、時には高い声または低い声で言ってみると意外な発見があります。また、直前または直後に間をとってみるのも有効な方法です。声色というのは声の音色です。誰かの真似をしたり歌舞伎口調にしてみたり、異性の女っぽい(男っぽい)言い方をしてみたりすることです。

あくまで練習なので不自然さを怖れずにやります。私もだんだん分かってきたのですが、演技は自然にやろうとすればするほど自然とはほど遠いものになるようです。一度不自然な状態を通過しないと、自然な演技にたどりつけないような気がします。

②感情表現のトレーニング

西田先生はこの稽古を何度もくりかえし指導してくださいました。

稽古方法は単純で、台詞の上に(得意そうに)とか(大慌てで)という指定があって、それに従って台詞を言います。

(ちょっと不機嫌に)みわちゃん、おしゃべりは大概にして、支度にかかったらどう

言ってみてください。きっとそれらしく出来てしまう人が多いと思います。でも本当はみわちゃんと自分との関係やこの台詞を言っている場所や時代。あるいは、なぜちょっと不機嫌なのか。そういうことを具体的に想像せずに台詞を言っても人間の台詞にはなりません。

そこで2回目は、参加者に台詞を割り振ってそれぞれの台詞がどういう状況で発せられたか考えてもらいました。台詞を言うときにはまず状況の説明をします。

時代は戦前。私は家の女主人です。大事な来客の予定があり皆が忙しく働いて準備をしていときに、廊下の隅で一番若い女中の美和が夫と談笑しているのを見かけます。嫉妬心がわいてきますが、はっきりと出すのは沽券にかかわるので、ちょっと不機嫌に「みわちゃん、おしゃべりは大概にして、支度にかかったらどう」と注意しました。

という感じです。

台詞にもよりますが、自由に想像を膨らますことができる人もいれば、そうでない人もいます。あくまで稽古なので想像が出来なかったからといって気にすることはありません。直感的に何となく台詞を言うのではなく、状況を意識して台詞を言うための稽古です。

大概は台本の中に状況の説明も書かれていますが、それは不十分なこともあるし、もっと膨らますことができる場合もあります。ですから、舞台に生きた人間を載せるためには役者がその人物がおかれた状況を想像し把握しておく必要があるように思います。

直感で演技をすることがうまい人もいます。②のトレーニングも台詞をそれらしく言うだけなら1回目で出来る人もいます。しかし、2回目、3回目となるとどうでしょう。1回目の新鮮さや輝きは失われてつまらない言い方になっていないでしょうか。スタニスラフスキーも同じことを考えました。この1回目の輝きをどうしたら何度も繰り返すことが出来るのかというのが彼の課題だったのです。

西田先生が私たちに何度もこの訓練を課したのも、そのことに気付かせるためだったのではないかなあと、先生のあのいたずらっ子のような笑顔を思い描いてみるのですが、残念ながら真実は分かりません。

余談ですが、20年前にやまさわたけみつ先生に初めてパントマイムを指導していただいたとき、最初に先生が言われたことを私はずっと肝に銘じていました。それは「フリにならないこと」という言葉です。パントマイムはどうしても壁やロープなどのテクニックに目を奪われがちです。しかし、同じ壁を演じるにもそれぞれ異なった状況があり気持ちがある。単なるテクニックだけのしている「フリ」ではなく、その状況や気持ちを意識して演技をしなさいという意味です。

台詞も直感やテクニックだけで、何となく言えてしまうことがあります。しかし、それではいつまでも安定した本当の演技の力を身に付けることは出来ません。これからの数ヶ月、西田先生のメソッドをたどりながら、先生が伝えようとしたことを探ろうと思います。そしてコロナ前よりもましな演技者になれればいいなと思います。

長くなりました。最後に前々回読んだ10分程度の短い台本をみんなで回し読みしました。

次回は日曜日。17時~19時。場所は四街道公民館和室です。
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